アルザスのガングランジェでも修行経験がある当主ジョフレ・マスは、グランメゾンで10年以上ソムリエとして活躍した輝かしい経歴をもちます。
他ボジョレーのラピエール、シルヴェール・トリシャール、シャブリのパットルー、オーヴェルニュのラボエムで醸造を学び、標高500m、樹齢120年の樹が植わる素晴らしい土地を手に入れました。
現在もラボエムで働きながら自身のドメーヌの仕事をしています。
1.3haもの畑を手に入れたところで、収量も少ないが、今後2.5haまで増やすことを目標に、それ以上は増やすつもりはないといいます。
ワイン生産に関しては、彼独自のポリシーがあるようです。
「なるべく自然に」「出来るだけ何も加えずに」と聞くと、ストイックに突き詰める印象がありますが、彼の場合はそれとは大きく違います。
今まで学んできたことを活かして自分が造りたい理想のものを追っていくと、時には自然を相手に全てを破壊されることがある。
それに人生全てをかけてしまうと、自分が守りたい”暮らし”があやうくなる。
災害によって畑が全滅する年があっても、醸造が上手くいかない年があっても、変わることなく暮らしていけるように、ボエムでの仕事を辞めるつもりはありません。
彼にとっては、手に入れた小さな畑でチャレンジすることこそが、すでに大きな冒険なのです。
毎年、自然に出来る量だけで、無理して多く造ることは考えていない。年によって収穫が減っても、それでもかまわない。
家も借金をして立派なものを手に入れるよりも、自分の身の丈に合ったもの、お金を稼ぐということよりも目の前の幸せと日々を大切に楽しむ。
異なる文化を尊重し、国境がない音楽を愛すヒューマニスト。ドメーヌ名となったトゥルトゥルカという名前にも、そんな彼の想いが込められています。
チリのチロエ島で友人たちと音楽を共有していたときに譲ってもらった楽器が「トゥルトゥルカ」です。大切にフランスに持ち帰りました。
歴史、政治、象徴主義を表すように彩られたこの素朴な楽器にちなんで名付けたことは、彼にとっては必然のようです。
ワインは、葡萄の力強さをダイレクトに感じる味わいながら長い時間綺麗な酒質を保てるポテンシャルをもっています。
落ち着いていて物静かな人柄ですが、個性的で、人や文化などいろいろな分野に尊重の気持ちをもつ彼の、魅力的で繊細な性格がワインにも反映されているようです。
友人を招いて料理をふるまったり語り合うことが好き、という彼が、私たちが訪問した時にふるまってくれた料理は、とびきり美味しいものでした。
自分の畑でとれた野菜と、いろんな珍しい香辛料をつかい手際よく作ってくれました。
香辛料のこと、ワインのこと、料理のこと、自身のこと、どんなことを質問しても、うわべだけの言葉で説明することがなく、物知りで丁寧な性格のジョフレ。
人に気を遣わせずに自然体で、常にゆっくりとした時間、そして彼と一緒にいる間は「想像を大きく超える幸せなもの」を共有してくれる。
それは、畑からの素晴らしい景色だったり、醸したワインだったり、ふるまってくれた料理、音楽、居心地のよい空間、、、
マイペースにみえて実は全てが計算しつくされていたのかもしれない。と思わせるほど素晴らしく忘れられないひと時でした。
あくまでも自分の思想と生活のペースは崩さないジョフレですが、ワイン造りの幅を広げたいという想いは着実に実現していくでしょう。
ブドウの木とテロワールに寄り添い、アンフォラや樽の中でその個性を表現する時間をワインと共有しながら、シンプルでクリーンなワイン造りを目指していきます。
SOUは2年目となる2023年ヴィンテージから輸入を開始します。